老後の時間を犠牲に…「70歳まで働く社会」は幸せなのか

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定年延長した60歳以上の高齢者の常用労働者数が急増している。厚生労働省が公表した2018年「高齢者の雇用状況」調査(11月16日公表)では、従業員31人以上の企業で働く60歳以上の常用労働者数は、過去最多の約363万人。前年比15万3000人増え、09年の216万人からは実に147万人が増えているのだ。
 
「法改正(高齢者雇用安定法)で、高齢者の雇用が企業や従業員に浸透した結果です。また、人材不足と高齢者の母数が増えていること、さらに高齢者の健康寿命が延びたことなど、政府の働き方改革の取り組みは順調に進んでいます」(厚労省高齢者雇用対策課)
 
 将来の経済成長に向けた未来投資会議では、ほぼ毎回高齢者の雇用促進が重要議題になっている。11月26日の第22回会議でも、高齢者の継続雇用年齢の引き上げが議題になった。安倍首相はその席で70歳までの就業延長をこう強調した。
 
「生涯現役社会の実現に向けて、70歳までの就業機会の確保を円滑に進めるため、各社の自由度がある法制を検討する」
 
 高年齢者雇用安定法は、65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に①定年延長、②継続雇用制度の導入、③定年制の廃止のうちいずれかの措置を講じるよう義務付けた。その結果、希望者全員が66歳以上まで働ける企業は、現在1万6660社と前年比1503社増えた。
 
■再雇用されても退職するケースが増えるだけ
 
 また、70歳以上働ける制度のある企業は4万515社と前年比5239社も増加しているのだ。こうした数字を見ると、高齢者にとってはまさに定年後の仕事も安泰かと思える。だが、岡山商科大学の長田貴仁教授が職場の同僚のこんな話をしてくれた。
 
「70歳まで教授会を引っ張り、バリバリ仕事をしていた評判のA先生が、70歳になった途端がんが分かり、あっという間に亡くなりました。こうした亡くなり方を見ると、何が楽しかったのだろうか、もっと楽しい老後があったのではと思ってしまいます」
 
 まさに、A氏は生涯現役を通した働き手だった。老後に費やす時間は人それぞれ違う。定年後の雇用継続は、個々が老後に持つ時間を犠牲にしたうえで成り立つといえる。
 
「産業構造の変革で今後の労働市場はAI、IoTが主流です。そこに高齢者が対応できますか? 企業が雇用年齢を広げたのも政府の指導でやっているだけ、そこには明確な意識も雇用形態もなく、定年延長で働かせるニーズもシーズも全く合致していません。これでは再雇用されても退職するケースが増えるだけです。安倍首相が言うのは、本当に豊かな国にするための政治なのかと思わざるを得ません」(長田貴仁教授)
 
 政府の言葉に踊らされてはいけない。
 
 
参考:https://news.goo.ne.jp/article/nikkangendai/bizskills/nikkangendai-509966.html

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