新卒採用で企業が「不採用理由」を伝えないのはなぜか

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6月になり、2020年春卒業の新卒採用選考が解禁されましたが、既に就活生の7割が内定を得たとの報道もあります。新卒採用選考が行われている時期に話題になるのが、不採用理由を伝えない企業側の姿勢です。企業側は不採用理由を伝える義務も法的責任もありませんが、不採用理由が分からないことで、一部の応募者が企業への不信感を高めたり、心にダメージを受けたりしているとの声もあります。
 
 なぜ、企業は不採用理由を開示しないのでしょうか。企業の採用事情にも詳しい、キャリアコンサルタントの小野勝弘さんに聞きました。
 
多様性の確保が難しくなる
 
Q.企業の新卒採用で、応募者の不採用理由を開示しないのはなぜですか。
 
小野さん「新卒採用で企業が不採用理由を開示しないのは、柔軟な人事施策が取れなくなるためです。なぜなら、不採用理由を開示すると、就職活動専門の掲示板などに書き込まれ、多くの就活生がそれをもとに対策を行い、仮に不採用になれば『対策したのに落とされた』というクレームにつながることがあり得ます。
 
また、募集ごとに応募者の重視するポイントは基本的に違います。不採用理由の傾向を分析した就活生が、『今年の重視ポイント』などと企業ごとにどのような人を採用するのか公表すると、同じようなことばかり主張する人が現れてしまい、多様性の確保も難しくなります」
 
Q.ネット上では「『この人と働いてみたい』など面接官の主観で採用が決まるから、不採用者に理由を言えないのでは」という声もあります。それも一因なのでしょうか。
 
小野さん「そもそも、人事を完全な主観で決めることはなく、その指摘は的を射ていないように思います。もちろん『面接官は1人だけ、かつ、最終面接は社長だけ』といった環境であれば、単純に『この人と働いてみたい』と、先方に気に入られれば入社できるという話もなくはないですが、基本的にはそうはなっていないと思います。
 
中には、『この人と働いてみたい』で可否が決まることはあると思いますが、それは面接官の主観というわけではありません。一度の面接で、面接官が複数いる場合であれば合議するでしょうし、1次、2次と面接があるのであれば、最終判断はやはり合議となるでしょう。
 
このように、採用の現場ではさまざまな面接官の『主観』を大勢で『客観』的に判断して結論を出しています。面接官の考える『この人と働いてみたい』というのは、一緒に仕事ができそうか、今のチームに所属させて大丈夫か、自社の方針の中でどう育てたらよいかなどさまざまな視点で判断し、『この人と働いてみたい』と表現することが多いように感じます」
 
Q.一方で、転職エージェントを介した採用選考では、詳細ではないものの不採用理由の概要を教えてもらえることが多いです。なぜ、転職エージェント経由なら不採用理由が分かるのに、それ以外の採用選考では教えてもらえないのでしょうか。
 
小野さん「転職エージェントを通じた採用活動は、中途採用が中心です。そのため、どれくらいの実績やスキルを求められているのかが明確で、その水準と応募者の比較がしやすいからです。
 
例えば、IT企業のプログラム言語で、志望者が得意としているプログラム言語では今回の配属先で即戦力になれない場合があったとします。得意にしている言語が多くの企業でよく使われているプログラム言語であっても、今の案件に取り組める人を求めている以上、該当しない応募者はお断りすることになるでしょう。そのため、『このたびは○○言語を用いての開発をお任せしたいと考えていたため、採用を見送らせていただきます』といった明確な理由が伝えられるのです。
 
逆に、新卒採用は実績やスキルではなく、人間性や取り組む力を評価します。今後の成長や、会社を背負う人財として活躍してもらえるかをイメージできるかどうかがポイントになるので、抽象的になりがちな分、開示しにくいように思います」
 
Q.採用選考で、企業は不採用者に対しての連絡で、「あくまでも他の応募者との相対評価の中で選考結果を出した」「今回は大変多数の応募があったため、選考基準もかなり高いものとなった中で、相対評価として結果を出した」といった抽象的な内容を伝えることがあります。このような伝え方で、よいのでしょうか。
 
小野さん「相対評価がよいかどうかということですが、人が人を見るからこそ相対評価となるのだと思います。そもそもが抽象的な評価をしている以上、間違った回答ではないと思います。ただし、抽象的過ぎると反発を招いたり、自己効力感が下がってしまう人もいるので、適切なフィードバックができると望ましいでしょう。
 
実例でいえば、募集要項にある、今求めている力などの記載を引用しつつ、『この記載の点が不足しているように感じた』などと伝えるケースもあるようです。基本的には企業も応募者も対等です。企業の判断を応募者に納得してもらうような取り組みもしていけるとよいでしょう」
 
Q.応募者が、不採用の理由をどうしても聞きたい場合、どのようにすればよいでしょうか。
 
小野さん「どうしても聞きたいのであれば、不採用通知に記載している連絡先に連絡することが第一でしょう。しかし、私はあまり聞く必要性はないと考えます。不採用理由の返答がリアルであったが故に、思いもよらないショックを受けて自己嫌悪に陥ったケースや、選考を受けた企業そのものが嫌いになったというケースもあるからです。
 
採用が『ご縁』だと言われるのは、たまたま今回の年度に応募し、たまたま今回の年度の採用方針で評価した結果、採用につながったという場合があるからではないでしょうか。就職活動が決め打ちにならないように、業界の研究などを深くやる必要があるのもそのためだと考えています」
 
Q.不採用の理由を聞いてきた応募者に対する企業側の心証は。「熱心な人だ」と思われて補欠採用になるケースはないのでしょうか。
 
小野さん「基本的に、特別な心証を抱くことはないように思います。なぜなら、補欠採用の理由が『不採用の理由を聞いたから』であれば、不採用者は全員が補欠採用の可能性があることになり、そもそもの採用人事に影響するためです。
 
ただ、『不採用理由を聞いて改めて自分を見直し、それでも御社に』と次の選考で採用を勝ち取った人もいます。従って、補欠採用のケースは考えにくいですが、不採用理由を聞いたことで志望度が高まり、2度目の採用面接でそれが伝わって採用に結びついたという話ならあり得ると思います」
 
 

参考:https://news.goo.ne.jp/article/otonanswer/bizskills/otonanswer-42601.html

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